F1 Academyのグリッドから、日本のKYOJO CUPへ

2025年、F1 Academyのグリッドに、ひとりの若いオーストラリア人ドライバーがいた。
ジョアンヌ・チコンテ。2008年12月14日生まれ、オーストラリア出身。2025年のF1 AcademyではMP Motorsportから、Wellaのサポートを受ける#25号車で参戦した。16歳にしてグリッドに名を連ねた、ひときわ若い才能のひとりだった。
カート時代には、2023年のオーストラリアカート選手権 Pink Plate部門を制し、FIA Girls on Track – Rising Starsではシニアカテゴリーファイナリストに選出。2024年にはシングルシーターへステップアップし、Australian F4、Central European Zone F4、Spanish F4、Formula Winter Seriesなどで経験を積んだ。
そのジョアンヌが、2026年、新たな挑戦の舞台に選んだのが日本のKYOJO CUPだ。
「私はずっと日本に来てみたい、日本を訪れてみたいと思っていました。日本でレースができることは、私にとって特別なチャンスです」
日本のレース環境について、ジョアンヌは「素晴らしい」と語る。オーストラリアのレース環境とは異なり、日本では多くの人がモータースポーツを盛り上げ、発信し、ドライバーを受け入れようとしている。その空気が、自分をより前向きにさせてくれるという。
「日本では、みんながこのスポーツを引き上げようとしていて、もっと多くの人に見てもらおうとしていると感じます。とてもウェルカムな雰囲気があって、それが私にとって、日本で走る大きなモチベーションになっています」
KYOJO CUPは、もっと良いドライバーになるための場所
F1 Academyで、ジョアンヌは多くのものを得た。フォーミュラ4のマシン、さまざまなコンディション、異なるサーキット、そして世界的なシリーズならではのメディア対応。そのすべてが、彼女にとって初めてのフォーミュラシーズンを濃密なものにした。
一方で、2026年のKYOJO CUPは、ジョアンヌにとってフォーミュラ全体で2年目のシーズンでもある。だからこそ、彼女は今年を「自分自身のドライバーとしての成長に集中する一年」と位置づけている。
「F1 Academyでは、さまざまなコンディションやコースで走る経験、そしてメディア対応など、多くのことを学びました。でもKYOJO CUPは、私の実際のドライビングを高めてくれる場所だと信じています。それこそが、私が求めていることですし、将来もっと良いドライバーになるために必要なことだと思っています」
世界の舞台を経験したからこそ、いま必要なものが見えている。
ジョアンヌにとってKYOJO CUPは、過去のキャリアを示す場所ではなく、未来へ進むために自分をもう一段引き上げる場所なのだ。
新しい国、新しい環境で問われる適応力
新しい国、新しい環境、新しいクルマ、新しいタイヤ。2026年のKYOJO CUPは、ジョアンヌにとって未知の要素が多いシーズンになる。
それでも、彼女は自分の強みを「適応力」だと語る。
「私のドライバーとしての強みは、適応力だと思います。新しいコンディションに学び、適応することは得意です」
日本は、その強みを発揮しやすい場所だとも感じている。
「日本では、経験を積み、学ぶチャンスを与えてもらえていると感じます。安心して挑戦できる環境があるんです」
もうひとつの強みは、レジリエンス。困難があっても折れずに進む力だ。
「自分にはレジリエンスもあると思います。そしてそのレジリエンスの中には情熱があります。それが、これからのモータースポーツへの愛を燃やし続けてくれると思っています」
F1 Academyを経験してきたとはいえ、日本でのレースはまったく新しい挑戦になる。だからこそ、ジョアンヌは結果を急ぐよりも、まずは一つひとつを吸収し、自分のものにしていくことを大切にしている。
「私の目標は、できるだけ早く学ぶことです。新しい環境、新しい国、新しいクルマ、新しいタイヤ。すべてが私にとってこれまでとは異なるものですから」
そして、シーズン終盤にはひとつの目標を見据えている。
「シーズンの終わりまでには、トップ10でレースをしていたいです」
KYOJO CUPに感じた、平等さと情熱

ジョアンヌが日本で感じた大きな違いのひとつが、安全への意識だ。ヨーロッパで走った時には、ミスをすればそれはドライバー自身の責任、という空気を感じることもあったという。一方、日本では、安全にレースを行うために、周囲が細かく配慮していると感じている。
「日本では、安全面が本当にしっかり見られていると思います。ミスをした時に、単にドライバーの責任にするのではなく、もっと安全にするためにどうすればいいかを考えているように感じます」
そしてKYOJO CUPについては、女性ドライバーを支える姿勢にも強い印象を受けた。
「私はF1 Academyという世界で最も大きな女性シリーズで走っていました。でもKYOJO CUPでは、すべてがもっと平等で、女性をより上のフォーミュラカテゴリーへ引き上げようとする情熱がとても強いと感じます」
世界的な女性フォーミュラ育成シリーズを経験したジョアンヌが、KYOJO CUPに対してそう語ることは、このシリーズが持つ価値をあらためて浮かび上がらせる。
「女の子だからといって、できないわけではありません。日本が女性ドライバーの人口を増やそうとしていることは、本当に素晴らしいことだと思います。だから私は、ここにいられることがとても嬉しいです」
日本で学び、夢へ近づく一年に
ジョアンヌの長期的な夢は、はっきりしている。
「私のモータースポーツでの長期的な目標は、いつかF1に行くことです。オーストラリア初の女性F1ドライバーになることを目指しています」
幼い頃からF1を愛し、F1で走ることを夢見てきた。日本でレースをすることは、その夢に近づくための希望でもある。
「日本でレースをすることは、私にF1へ行く希望を与えてくれます。日本は、私をF1へ導いてくれる場所だと感じています。今は、少しずつF1に向けてレベルを積み上げていくことが目標です」
そして、F1だけでなく、スーパーフォーミュラで走ることも彼女の夢のひとつだという。
日本という国そのものについても、ジョアンヌはとてもポジティブな印象を持っている。
「日本が大好きです。文化も素晴らしいし、みんなとても親切で、あたたかく迎えてくれます。私は世界中を旅してきましたが、日本は間違いなく大好きな国のひとつです」
F1 Academyのグリッドから、KYOJO CUPのグリッドへ。
世界を経験した若いオーストラリア人ドライバーは、日本で新しい挑戦を始める。
KYOJO CUPで学び、経験を積み、自信を深めること。
その一つひとつが、ジョアンヌ・チコンテの夢であるF1へと続く道になる。