彼女の素顔

INTERVIEW

Vol.2

Kilei Kanemoto

“上の景色”を知ったから、もう一度狙いにいく。
バトルで魅せる、フォーミュラ2年目

Kilei Kanemoto

心機一転で迎える、フォーミュラ2年目




2026年、金本きれい選手はKYOJO CUPでフォーミュラ2年目のシーズンを迎える。

今の心境を尋ねると、金本選手はこう答えた。

「シーズン2年目になるんですけど、新しい選手や若手の選手も参戦してきているので、心機一転というか、気持ちを入れ替えて頑張ろうという感じです」

目標は明確だ。

「もちろん優勝を目指すんですけど、最低でも表彰台には乗らないといけない、というミッションは自分の中であります」

4歳からカートを始め、レース歴はすでに20年以上。全日本ジュニアカート選手権で腕を磨き、2016年のSL全国大会レディースクラス優勝、全日本カート選手権FS-125/X30でシリーズランキング3位など、カート時代から実績を重ねてきた。2021年からKYOJO CUPに参戦し、タイトル候補として期待されてきたドライバーでもある。

一方で、KYOJO CUPで過ごしてきた時間は、簡単なものばかりではなかった。

VITAでは思うように結果を残せず、「向いていないのかな」と考えたこともあった。それでも、第一集団や第二集団での激しいバトルを重ね、2024年11月のKYOJO CUPエキシビションレースでは、翁長実希選手、富下李央菜選手との三つ巴の接戦を展開。初日にトップチェッカー、2日目に2位でフィニッシュし、「上の景色」が見えたことで気持ちが変わったという。

その経験があるからこそ、2026年はただ参戦するだけのシーズンではない。もう一度、自分の力で上を狙いにいく一年になる。

フォーミュラの楽しさと、タイム差の難しさ




KYOJO CUPがフォーミュラマシンで争われるシリーズとなった2025年。金本選手が初めてフォーミュラに乗った時の印象は、とてもシンプルだった。

「楽しかったですね」

VITAしか乗っていなかった時と比べ、スピード感もパワーも、グリップも大きく違う。ダウンフォースを感じながら走ることも、金本選手にとって新鮮だった。

「スピード感が違いました。VITAしか乗っていなかったので、パワーも全然異なりますし、グリップもすごく良くなった。フォーミュラになって、ダウンフォースも面白いなというのがシンプルな感想です」

一方で、VITAにはVITAの面白さがある。

「VITAはHパターンなので、最初はそこに苦戦しました。車の本来の操作というか、ヒール・アンド・トゥも自分の力でやる。それが難しいところでもありますけど、バトルになると、それをどううまく使うかが面白いところです」

フォーミュラは、グリップが高く、楽しく走れる。だが、そのぶんタイム差が非常に小さい。

「ダウンフォースがよく効いていて、グリップが高いので楽しく走れるんですけど、タイム差がすごく狭い。その中で一番上に行くのが結構難しいです」

楽しさと難しさ。
その両方があるからこそ、金本選手は自分の課題と向き合っている。

苦手なところは見えている。だから、向き合う




フォーミュラ2年目に向けて、金本選手が特に伸ばしたい部分は明確だ。

「苦手なところは何カ所か決まっているので、そこを集中的に直していくのが課題かなと思っています。同じところがずっと克服できないというか、自分の運転の癖が、最近すごく露骨に表れてきているので、そこを改善することと向き合っています」

課題が見えていることは、決して悪いことではない。
どこを直せばいいのかが分かっているからこそ、そこに集中できる。

オフシーズンには、これまで以上にトレーニングを強化した。ジムへ行く回数を増やし、シミュレーターでの練習機会も自分なりに増やしたという。

「オフシーズンはあまり実車で練習できなかったので、シミュレーターで感覚を忘れないようにしました」

マシンのシャッフルなどもあり、思うように走行機会を確保できなかった。だからこそ、できる準備を重ねる。金本選手は、そうやってフォーミュラ2年目に向けた土台を作ってきた。

バトルの駆け引きには、自信がある




金本選手の強みは、長いカートキャリアの中で培ってきたバトルの力だ。

「小さい頃からカートをやっていて、男子の中に混じって全日本カート選手権にも出てきたので、バトルの駆け引きには自信があります」

幼い頃から厳しい環境で戦い、接近戦を経験してきた。その経験は、KYOJO CUPでも彼女の大きな武器になっている。

2026年のKYOJO CUPには、新しい選手、若手の選手、海外からの参戦ドライバーも加わる。上位の勢力図も簡単には読めない。だからこそ、金本選手は今季の面白さを「毎回違う展開が見られること」だと語る。

「フォーミュラになって順位が読めないんです。上位グループも、毎回勝つ人が違ったり、上位の顔ぶれが全然違ったりすると思います。順位もごちゃごちゃに混ざるので、バトルも毎レース違う展開が見られるのでは」

ファンに見てほしいのは、まさにそこだ。

「全部見逃さずに見てもらう方が面白いのかなと思います」

KYOJO CUPのレースは、単に順位だけを見るものではない。
誰がどこで仕掛けるのか。どのバトルがどう動くのか。金本選手の言葉には、バトルを知るドライバーだからこその視点がある。

支えてくれる人たちと、長く続けることの意味




金本選手は、レースを続けてきて良かったこととして、人とのつながりを挙げる。

「レースをやることで、いろいろなスポンサーさんやチームにもお世話になってきました。長くやればやるほど知り合いが増えて、応援してもらえることも多くなっていく。それはすごくいいところだと思います」

レースはひとりでは続けられない。
チーム、スポンサー、関係者、応援してくれる人たち。長く続けてきたからこそ、その大切さも分かる。

現在所属するチームについても、金本選手は感謝を口にする。レース経験が豊富なチームではなかったところからKYOJO CUPに参戦し、VITAから始まり、金本選手とともにフォーミュラへ挑戦してきた。タイヤの選択や練習機会など、彼女の意見に向き合い、協力してくれているという。

「自分ができるようにしたらいいよ、という感じですごく協力的にやってもらっています。本当にありがたいです」

昨年の最終戦では、オープニングラップで壁にぶつかってしまったことが印象に残っている。だが、その夜には関谷正徳氏も交えて反省会をし、「切り替えて頑張りな」と背中を押してもらった。

「マイナスコメントというより、切り替えて頑張れ、という感じで背中を押してもらったので、ありがたいなと思いました」

支えてくれる人がいる。
だから、また前を向くことができる。

“うまくやりながら、諦めずに”。長く戦うために




将来どんなドライバーになりたいか。
金本選手が名前を挙げたのは、アメリカのダニカ・パトリックだった。

「ダニカ・パトリック選手に憧れています。彼女はすごく尖っていて、気が強いことで有名です。それでも結果はしっかり残すし、自分にストイックなところを尊敬しています」

自分は、そこまで尖ったタイプではない。そう自己分析しながらも、結果を残し、自分に厳しくあり続ける姿勢には強く惹かれている。

若いドライバーたちへのメッセージを尋ねると、金本選手らしい、現実的で温かい言葉が返ってきた。

「周りの人に頼れるところは頼って、人脈を広げることも大事です。相談しつつ、うまくやっていく。うまい話についていかないようにしながら、長くやることが大事では、と思っています。諦めずに」

強い言葉で夢を語るだけではない。
長く続けるために、人を大切にすること。相談すること。焦って近道を選ばないこと。そこには、20年以上レースを続けてきた金本選手だからこその実感がある。

自分らしい生き方をするために大切なことを問われた時、すぐに答えが出るタイプではない。少し考え、迷いながらも、最後にたどり着くのはやはり「諦めずに頑張ること」だ。

2026年、金本きれい選手はフォーミュラ2年目のシーズンを迎える。
“上の景色”を知ったからこそ、もう一度そこを狙いにいく。
長いキャリアで培ったバトルの駆け引きと、支えてくれる人たちへの感謝を胸に、今年も金本選手は、見逃せないレースをつくりにいく。