彼女の素顔

INTERVIEW

Vol.8

Rami Sasaki

予選の速さを、レースで勝つ強さへ。
感謝を結果で返すためのフォーミュラ2年目

Rami Sasaki

走れることは、当たり前じゃない




2026年、佐々木藍咲選手はKYOJO CUPでフォーミュラ2年目のシーズンを迎える。

その率直な気持ちを尋ねると、最初に返ってきたのは「ありがたい」という言葉だった。

「2年目に乗れることは当たり前ではないと思っています。チームの皆さんだったり、スポンサー様だったり、いろいろな方々のご協力があってのことですし、走れることにまずは本当に感謝の気持ちが大きいです」

KYOJO CUPで走ること。
フォーミュラマシンでレースを続けられること。
その環境を、佐々木選手は決して当然のものとして受け止めていない。

過去のインタビューで、彼女はKYOJO CUPについて「レース界でも環境的に恵まれているカテゴリー」と語っていた。車両を一括管理し、イコールコンディションのもとで技術力を競えること。その環境があるからこそ、自分自身の力を試せる。そうした感覚は、2年目を迎える今も変わっていない。

そして、感謝の気持ちは、目標の明確さにもつながっている。

「やっぱりチャンピオンを目指して頑張っていきたいです」

チームやスポンサー、支えてくれる人たちへの思いを、走りと結果で返す。佐々木選手の2026年は、その気持ちから始まる。

近いようで遠かった“一位”への距離




2025年、佐々木選手はシーズンを通じて大きな成長を見せた。

序盤は、フォーミュラマシンに慣れてきた一方、すぐには速さにつながらず、タイムにも表れない時期があったという。だが、夏頃から新たにアドバイザーがついたことで、見えるものが変わっていった。そして8月に迎えた第3戦で、2位を獲得。フォーミュラ参戦1年目、初めて表彰台からの景色を見た。

「いろいろなことに目を向けて、気づいて、修正していった時に、表彰台という結果を取ることができたのかなと思います」

その後も、予選や決勝で少しずつ上位に加わってレースができるようになった。けれど、まだ届かなかったものがある。

「一位というところは、近いようで遠く感じました。表彰台の時は、本当にトップを取れるんじゃないかなと内心思いましたけど、やっぱりその一歩がすごく大きいものなんだと感じた一年でした」

表彰台に上がった時の気持ちも、単純な喜びだけではなかった。

「やっぱり悔しさはあります。もうちょっといけたかなっていう。レースの中盤は私の方が速くて、ファステストも取っていたんですけど、最後の2、3周で、経験のあるトップの選手がペースを上げたところに食いつけなかった。それが悔しいというのが、まず第一印象でした」

速さはあった。トップを動かすこともできた。だが、最後まで食らいつき、勝ち切るところにはまだ届かなかった。
その悔しさこそが、佐々木選手の今年の原動力になっている。


基本を忘れないことが、強さになる




フォーミュラマシンの難しさについて、佐々木選手は「ダイレクトさ」を挙げる。

「普通の箱の車と違って、車体自体が大きかったり、タイヤが剥き出しになっていたりするので、車間の難しさがあります。あとは、アクセルもブレーキもクラッチもすべてダイレクトに伝わるので、本当にレーシングカーの一番上の車はフォーミュラなんだなと感じています」

タイヤの感覚、路面の感覚、スピード、風。
そのすべてが直接伝わってくるからこそ、難しく、同時に面白い。

「リスクが楽しさに変わるというか、ドキドキ感が楽しみに変わるのも、フォーミュラの魅力のひとつなのかなと思います」

レース中に意識していることを尋ねると、佐々木選手は「いつも通り」と答えた。特別なことをするのではなく、練習で意識してきたことを、レースでもそのまま意識する。特に大切にしているのは、ドライビングの基本だ。

「ハンドルをしっかり切るとか、ハンドルをしっかり握るとか、本当に初歩的なところを忘れないようにしています」

その考え方の背景には、かつて打ち込んでいたバレーボールの経験がある。

「点数が競り合ってきた時って、精神状態がばらつきやすくなります。そこで基本を忘れてしまうと、何かすごいことを一発決めたいと思っても絶対にできない。基本をおろそかにしてしまうと思ったようなプレイができないということは、バレーボールで学びました」

スポーツとしてレースに向き合うこと。
準備を重ね、トレーニングを積み、基本を忘れずに本番で力を出すこと。
それが、佐々木選手の強みになっている。


予選の速さを、レースで勝つ強さへ




佐々木選手が自分の強みとして挙げるのは、まず「スポーツマンとしてレースに向き合えること」だ。

「クルマにただ乗るだけではなくて、スポーツとして、準備からトレーニングを重ねてレースに臨む。その考え方が、自分の強みかなと思います」

もうひとつ、自信を持っているのが予選での一発の速さだ。

「予選一発のタイムには、結構自信があります。今年はその強みを、レースでも活かせるように変えたいと思っています」

予選で速い。
それを決勝での強さにつなげる。
1周の速さを、レース全体を組み立てる力へと変えていく。

2026年の佐々木選手にとって、それは大きなテーマになる。

オフシーズンには、自身の課題であるスロットルワークについてデータを見返し、どう改善するかを考えてきたという。トレーニングやシミュレーターも重ね、テストに臨んできた。

「データを見て、やっぱりここがダメだな、どうやって改善しようといろいろ考えていました。トレーニングやシミュレーターも回数を重ねてきました」

感覚だけではなく、データと向き合い、基本に戻り、レースで強くなるために準備する。
その積み重ねが、フォーミュラ2年目の走りを変えていく。


好きなことを伝え、行動し、発信する




佐々木選手は現在、KCMGで働きながら、チームの一員としてKYOJO CUPに参戦している。

「働きながら乗せていただいているので、感謝の気持ちを持って、それを結果で恩返しできるようにと、今は強く思っています」

過去記事でも、佐々木選手はKCMGという国際的に活躍するチームの一員として走ることへの感謝を語っていた。良い環境を与えてくれたチームに対して、走りで結果を出すことで恩返ししたい。その思いは、今年さらに強くなっている。

KYOJO CUPについて、佐々木選手は「本気度をすごく感じるレース」だと語る。

「みんながみんな、すごく強い気持ちを持って戦っている。周りで手伝ってくださっている方たちの思いを見ても、本当に“気持ち”が強いレースだなと思います」

これからレースを目指す女の子たちへ伝えたいことは、「諦めない心」だ。

「カートをやっていなかったとか、始めたのが遅いとか思わずに、まずチャレンジしてみて、諦めずに行けるところまで行ってほしいです。レースや車が好きという気持ちを忘れずに、諦めないでほしいなと思います」

そして、自分らしく生きるために大切にしていることを尋ねると、佐々木選手はこう答えた。

「自分の好きなことをしっかり周りに伝えて、行動して、発信することだと思います。好きなことを発信することで、よりその好きなことに集中できたり、愛情を持てたりして、いろいろな人に知ってもらえるので、大切だと思います」

好きなことを、隠さない。
感謝を、走りで返す。
そして、予選の速さを、レースで勝つ強さへ変えていく。

フォーミュラ2年目の2026年。佐々木藍咲選手は、支えてくれる人たちへの感謝を胸に、チャンピオンを目指して走り出す。