彼女の素顔

INTERVIEW

Vol.12

Riona Tomishita

まだまだ、速くなれる。
反省を伸びしろに変えて挑む新シーズン

Riona Tomishita

勝てる手応えと、勝ち切れなかった悔しさ




富下李央菜選手は、KYOJO CUPの中でも早くから注目を集めてきた若手ドライバーのひとりだ。

2023年、まだ高校2年生だった富下選手は、KYOJO CUPの開幕戦でいきなりポールポジションを獲得。華奢でチャーミングな雰囲気と、ステアリングを握った時に見せる速さ。そのギャップもあって、その名は一気にレース関係者の間に広まった。2024年には第3戦と第5戦で2位に入り、シリーズランキングは5位。着実に戦績を積み上げてきた。

そして2025年、KYOJO CUPはフォーミュラマシンで争われるシリーズへと変わった。富下選手にとっても、新たなチャレンジの一年だった。

「乗っている感触は、徐々に良くなっていきました。でも、レースになるとミスが目立ちやすくなる。小さなミスの積み重ねで、優勝できなかった一年だったと思います」

勝てる手応えはあった。だが、結果としては勝ち切れなかった。だからこそ、見えてきた課題もはっきりしている。

「予選からミスがあって、1周をまとめられずにベストタイムが伸びきらないことがありました」

フォーミュラのレースでは、ほんのわずかなミスが順位に直結する。1周をどうまとめるか。予選でどうタイムを出し切るか。2026年に向けて、富下選手が向き合っているのは、その細かな精度だ。


苦手を見つめ、まだ試している途中




今シーズンに向けて、富下選手は自分の課題を冷静に見つめている。

「去年から修正してきている部分はあります。ただ、苦手なポイントがあって、特に予選は苦手意識があります。いろいろ考えながら試しているんですけど、なかなかはまらない感じで、まだ試している途中です」

その言葉には、派手な自信や大げさな表現はない。だが、だからこそ富下選手らしい。自分の課題を曖昧にせず、できていることとできていないことを分けて、ひとつずつ向き合っている。

フォーミュラマシンについても、手応えと難しさの両方を感じている。

「ドライコンディションで言えば、かなりいい方だと思います。ただ、小雨のようなコンディションになると、まだ少し難しい部分があります」

KYOJO CUPでは、富士スピードウェイという高速コースを舞台に、わずかなコンディションの変化にも対応しなければならない。ドライなら手応えがある。一方で、雨や小雨、路面の変化にはまだ課題がある。その現状を冷静に受け止めていることが、富下選手の強さでもある。


いろいろなクルマに乗ることが、視点を広げてくれる




富下選手は、KYOJO CUPだけでなく、さまざまなカテゴリーで経験を重ねてきた。

過去のインタビューでも、スーパー耐久やVITAなど、異なる車両での経験が自分の走りに生きると語っている。違うクルマに乗ることで、普段とは異なる感覚が得られ、それがまた別の車両にも活かされる。チャンスがあればいろいろなレースに出たいという姿勢は、今も変わらない。

「いろいろなクルマに乗ってみると、いろいろな視点で見えることがあります。それに、そもそも走れる回数が増えるので、それはすごくいいと思います」

経験を増やすこと。視点を増やすこと。
それは、富下選手が成長していくうえで大切にしていることのひとつだ。

KYOJO CUPがフォーミュラ化されたことについても、彼女は前向きに捉えている。

「フォーミュラカーに変わったことで、周りの人がどういうレベルなのかが見て分かりやすくなったと思います。VITAよりも、フォーミュラの方が分かりやすいと思うので」

同じフォーミュラマシンで競うからこそ、ドライバー同士の差がより見えやすくなる。自分がどの位置にいるのか、何が足りないのか、どこを伸ばせばいいのか。富下選手にとってKYOJO CUPは、自分の実力を測り、磨くための場所でもある。


反省が多かったからこそ、伸びしろがある




2026年のKYOJO CUPには、新しいライバルも加わる。F1 Academy経験者や海外からの参戦ドライバー、若手の新戦力。シリーズ全体のレベルは、さらに高まっていく。

その中で、富下選手はどんなレースを見せたいのか。

「去年は反省が多かったので、伸びしろはかなりあると思います。そこをしっかり直して、結果を出したいです」

反省が多かった、という言葉は、ネガティブに聞こえるかもしれない。けれど富下選手は、それを「伸びしろ」として捉えている。小さなミスを減らすこと。予選をまとめること。変化するコンディションに対応すること。ひとつひとつを改善できれば、結果は必ず近づいてくる。

目標を尋ねると、答えはシンプルだった。

「目標はチャンピオンです」

多くを語るわけではない。
けれど、その短い言葉には、確かな意志がある。

富下選手は、海外のサーキットにも興味を持っているという。

「海外のサーキットも面白そうだなと思うので、走ってみたいです」

KYOJO CUPで結果を出すことは、自分の将来にもつながる。そう考えているからこそ、2026年は大切なシーズンになる。


支えてくれる人たちに、結果で応えたい




富下選手が発信するSNSの投稿には、周囲への感謝の言葉が多い。インタビューでも、チームやメカニックへの感謝を自然に口にした。

「そもそも乗せてもらわないと私は走れないですし、メカニックの人が作業をしてくれているから走れています。クラッシュした時もすぐに直してくださるし、走り方のアドバイスをしてくれる人もいる。本当にいい環境だと思います」

自分ひとりでは走れない。
支えてくれる人がいるから、レースができる。

その思いは、富下選手にとって大きな力になっている。だからこそ、優勝した時にチームの人たちが喜んでくれる瞬間が、一番うれしいという。

一方で、プレッシャーや焦りを感じやすいタイプでもあると自分で語る。

「プレッシャーとか焦りは感じやすいタイプです。でも、スタートしてしまえば、やることをやるだけなので。切り替えるという感じでやっています」

レース前のルーティンは特にない。むしろ「違うことをしない」ようにしている。いつも通りに準備し、いつも通りにグリッドへ向かう。そこにも、富下選手らしい自然体の強さがある。


夢を追い続けて、結果で見せる




ファンへのメッセージを尋ねると、富下選手はサーキットで直接応援を伝えてくれる人が増えていることを、とても喜んでいた。

「最近はYouTubeだけじゃなくて、サーキットに来て、ピットウォークなどで応援していると伝えてくれる方がすごく多いので、とてもうれしいです。だからこそ、結果でしっかりいいところを見せられるように頑張りたいです」

見てくれる人がいる。
応援してくれる人がいる。
だから、結果で応えたい。

反省が多かった一年は、富下李央菜選手にとって、まだ速くなれる余地を知る一年でもあった。

その伸びしろを、2026年は勝ち切る力へ。
夢を追い続ける彼女の走りが、サーキットで、そして画面の向こうで応援する人たちに届いていく。