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2026年スーパーフォーミュラ開幕戦もてぎ記者会見レポート
2026.04.05

登壇したのは、KYOJO CUP代表の関谷正徳氏、JRP代表取締役社長の上野禎久氏、TEAM TOM’Sの斎藤愛未選手と舘信秀代表、そしてKONDO RACINGからKYOJO CUPに初参戦する松井沙麗選手と近藤真彦代表。その顔ぶれ自体が、この日の会見の重みを物語っていました。
<シリーズを育てた情熱と、広がる接点>
冒頭、関谷代表は「女性ドライバーがさらに活躍していけるような、輝いていけるような場を我々が提供し続けていかなければいけない」と語りました。シリーズを立ち上げ、育ててきた人間の言葉として、あらためてその重さと覚悟が伝わるものでした。
KYOJO CUPはいま、「女性だけが出場できるレース」という枠を超え、女性ドライバーの可能性を社会に向けて示す舞台として、確かな存在感を持ち始めています。
その広がりを後押ししているのが、スーパーフォーミュラとの連動です。JRPの上野社長は、自身が以前からKYOJOの大ファンだったことを明かしたうえで、「JRPのいろんなチャネルを使ってKYOJOの魅力を伝えられないか」と関谷代表と議論を重ねてきたと説明しました。KYOJOのファンにスーパーフォーミュラを、スーパーフォーミュラのファンにKYOJOを。この接点の拡張は、シリーズの未来を考えるうえで大きな意味を持ちます。
<本気で勝ちにいく舞台としての評価>
TEAM TOM’Sの斎藤愛未選手は、今季への意気込みを問われ、「しっかりチャンピオンを獲れるように今取り組んでいる最中」と力強く答えました。昨季の悔しさを糧に、その言葉には静かな覚悟がにじみます。
舘信秀代表もまた、KYOJO CUPの現在地を印象的な言葉で表現しました。シリーズ創設時から関谷代表の情熱を見てきた立場として、「このレースが立ち上げられたのは何をおいても関谷くんの情熱のみ」と振り返り、「KYOJO CUPは大変面白くなっていくと思います。コンテンツとして大変素晴らしい」と評価。チームとしても優勝を狙っていくと明言しました。
勝ちにいく価値のある舞台として、トップチームが本気でKYOJO CUPを認識しているということ。それ自体が、このシリーズの成長の証です。
<日本が大切にしなければいけない宝物>
この日の中心にいたのが、KONDO RACINGからKYOJO CUPに参戦する松井沙麗選手です。2024年1月にウィリアムズ・レーシングの育成ドライバーとなり、約2年間ヨーロッパでカートレースを戦ってきた松井選手は、今年、フォーミュラ1年目のルーキーイヤーとしてKYOJO CUPに挑みます。
「KYOJO CUPを盛り上げたい」「日本のモータースポーツ界に女性を増やす活動としても、自分が協力できるように頑張っていけたら」。自身の結果だけでなく、より広い未来に視線を向けているところにも、松井選手の魅力があります。
近藤真彦代表は、関谷代表が長年描いてきたスーパーフォーミュラとの同時開催という構想が、JRPや富士スピードウェイとの連携で実現し、KYOJO CUPが人気カテゴリーへと成長してきた流れを振り返ったうえで、松井選手についてこう語りました。
「日本が大切にしなければいけない宝物を預かっちゃった。もうチャンピオン獲らせるしかない」。期待の大きさとともに、若い才能をきちんと育て、輝かせたいという強い責任感。その言葉は、松井選手への賛辞であると同時に、KYOJO CUPという舞台への信頼表明にも聞こえました。
<世界を見ながら、一歩ずつ>
質疑応答では、松井選手の歩みとその先に見据える未来が、より具体的に語られました。現在はウィリアムズのアカデミー所属という形ではないものの、契約下でトレーニングドライバーとしてサポートを受け、年に数回ファクトリーを訪問してフィジカルやシミュレーターのトレーニングを行っているといいます。
彼女が描くのは、F1アカデミー、そしてF1に乗りたいという目標。日本国内ではスーパーフォーミュラやスーパーGTへの参戦意欲も口にしました。世界を見ながら、日本でも戦う。その両方を自然な視野として持てるのは、ヨーロッパの2年間があったからこそかもしれません。
その2年間で得たものとして、松井選手が真っ先に挙げたのが「英語力、コミュニケーション能力」。バトルの強さやメンタルの成長も実感している一方で、カートからフォーミュラへの転向では荷重移動の違いに苦戦していることを率直に明かしました。
華やかな期待を背負いながらも、課題と向き合う姿を素直に見せた松井選手に、斎藤選手は先輩ドライバーとして温かく言葉をかけました。フロントブレーキの調整など、カートにはないタスクへの対応、そして1台の車両に関わる人数が増える分だけ重要になる周囲とのコミュニケーション。丁寧に説明しながら、「困った時は相談してください」と笑顔で語りかける。
競い合う相手でありながら、女性活躍の場を押し広げる仲間でもある。KYOJO CUPらしい空気が、自然と滲み出た場面でした。
<積み重ねてきた時間の意味>
会見終盤、斎藤選手は海外選手や若いドライバーが増えている現状を踏まえ、「もう日本だけのレースではなくなっている」ことに言及。世界に見られるレースでチャンピオンを獲ることは、たくさんのチャンスに繋がるはず、と語りました。
キャリアの不安を抱えながら走り続けてきた15歳の頃。女性が四輪に進むこと自体が"異例"だった時代を斎藤選手は振り返りながら、「私たちの時にはなかった環境でしたけど、いつか私たちが頑張っていけばこういう環境が築かれるっていう希望を抱きながら、15歳からずっと今まで走ってきたので、ちょっと今、嬉しいことですね」と語りました。
松井選手の参戦を歓迎するその言葉は、同時にKYOJO CUPが積み重ねてきた時間の意味を、確かに物語っていました。
もてぎで開かれた記者会見には、いくつもの前向きな兆しが詰まっていました。
シリーズを育ててきた情熱、それに共鳴するトップカテゴリーとの連携、勝利を目指すチームの本気、世界を視野に入れた若い才能の参戦——そしてその背中を押す先輩たちの存在。
KYOJO CUPはいま、女性ドライバーのための舞台であるだけでなく、日本のモータースポーツの未来に新しい選択肢と希望を示す場へと育ちつつあります。松井沙麗選手の挑戦は、その象徴のひとつ。この春、KYOJO CUPはまた一歩、確かに前へ進んでいます。
