誰にも負けないF4経験値を強みに
2025年は全戦優勝を狙う
2025年、新型フォーミュラマシンでのKYOJO CUPが始まった。2024年までVITAで戦ってきたKYOJOメンバーのほとんどが、フォーミュラでのレース参戦は憧れであると同時に未知の世界。そんな中、FIA-F4選手権(以下、FIA-F4)に何度もエントリーし、男性レーサーと互角に競い合いながら腕を鳴らしてきた選手がいる。下野璃央選手(以下璃央選手)、その人だ。
「昨年度はFIA-F4のシリーズ第2戦で、オープニングラップを終えた段階でトップ6まで食い込んだんです。だけど、首位争いで接触アクシデントが起こって大きく順位を落としてしまって。女性初の表彰台を逃したことが、悔しかったですね。」
FIA-F4といえば、F3の前段階のフォーミュラレース。スーパーGTシリーズの国内戦においてサポートレース的な立ち位置で、若手レーシングドライバーを育てるカテゴリーとしても注目されている。璃央選手は2022年からこのFIA-F4を主戦場とし、最高7位の戦績を持つ。
「私は四輪のレースはフォーミュラカーから始めているので、KYOJOフォーミュラもある程度のところまではいけると思います。そこから先、伸びるかどうかはセンス次第。走行練習ではみんな思っていたより速いタイムを出してきていますが、タイムを追いつかれたとしてもF4のレース経験は私のほうが豊富じゃないですか。だから簡単に負ける気はないです。」
根拠のある強気な発言は、聞く人までもスカッとさせる。実際、璃央選手の経験値は他のKYOJOメンバーも一目置くところだ。
戦績の振るわなかったKYOJO 2024
フォーミュラで、追う側から追われる側へ
2024年、VITAでのKYOJO CUPではドライバーズランキング3位を飾った。苦い思いをしたのはシリーズ第5戦。予選でポールポジションを獲り、決勝でも順調に周回を重ねてトップチェッカーを受けたが、車両規定違反が見つかり正式結果で失格となった。
「聞いた瞬間『え?』ってなりましたね。天から地に落とされた気分でした。VITAではチャンピオンを獲っていないという理由で2024年は出場したんですけど、KYOJOにはVITA職人のような速い選手がいますし、その厚い壁は簡単には破れませんでしたね。」
KYOJOドライバーたちの実力を認めながらも、2025年からフォーミュラカーが採用されると知ったとき、璃央選手は耳を疑ったという。
「正直、女性のフォーミュラカーレースって現実的ではないなと思いました。それくらいVITAとフォーミュラでは車格も操作も全然違うんです。女性ドライバーにとって決して簡単なチャレンジではないので、一体何人がF4車両を乗りこなせるの? それでレースになるの?って最初は疑心暗鬼でした。でも走行練習からみんな乗りこなせているので、やるなぁって感じです。」
エントリーリストに海外勢の名前を見つけ、璃央選手の闘志にますます火がついた。
「VITAからのおなじみの顔ぶれと違って、海外選手の実力は未知。気にならないといったら嘘になりますね。私自身、経験値なりタイムなりで注目されていることもあり、そのプレッシャーは感じています。VITA時代は追う立場でしたが、これからは追われる立場。しんどいですが逃げ続けたいと思います。」
大手企業がスポンサードするレースに期待
見据える先は女性レーサーの未来

今シーズンからTOYOTA GAZOO Racing、株式会社ホンダ・レーシングがKYOJO CUPをサポート。その注目度は絶大だと璃央選手は考えている。
「レース業界の方も観客の方からしても、スーパーフォーミュラと同じカラーリングで、まず見栄えがいいですよね。F1とジュニアチームみたいな、すごい注目度だと思います。だから私がもしチャンピオンを決めたら、所属するITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL with Dr. DRYも注目されるわけですから、そこから生まれる相乗効果や化学反応も今から楽しみなところです。」
新型フォーミュラでの初レースとなる2025年。璃央選手が狙うのは初代チャンピオンの席、ただ一つだ。
「なんなら最終戦が始まる前に、シリーズチャンピオンを決めたいです。もし私が全戦優勝して、たとえば…たとえばですけど、スーパーフォーミュラのテストが受けられるとか、そうしたステップアップがその先にできたら、女性レーサーの道を切り開けるじゃないですか。そんな前例を創ることで、KYOJO CUPもレース界もさらに盛り上がっていくんじゃないかと思っています。」