最終戦の予想外な展開にも屈せず
最後までベストを尽くす精神力

KYOJO CUPにおける2022年度シリーズチャンピオン、翁長実希選手(以下、実希選手)。2019、2020、2021、2023、2024年度をシリーズランキング2位に輝いたKYOJO VITAの猛者だが、2024年の最終戦はなかなか番狂わせだった。
カテゴリー史上最多となる37台がエントリーした第6戦。その決勝で、実希選手は試したことのないマシンセッティングで挑んだ。
「いつもと違う感覚はありましたが、それに臆することなくチャレンジはできました。ですが、序盤からコースアウト、オーバーステアでスピンして最後尾まで後退して。焦るような場面でしたが、気持ちをしっかり切り替えて、危険な動きなくバトルを繰り広げられたのは良かったと思います。」
第5戦が終了した時点での実希選手のポイントは77。首位の選手とは僅差だった。互いにシリーズチャンピオンを賭けての最終戦だったが、スピンした瞬間にその可能性が無くなったことを、実希選手は悟ったという。
「それでも最後まで何が起こるかわからないと、願うような気持ちで今できることを一所懸命やるだけでした。途中ブロックされたり、バトルし合ったりしながら、最後の1周まで『もう1台、もう1台』と追い上げて。あのようなかたちでKYOJOドライバーを背後から見ることってなかなかないんですけど、どこを走ってもみんな前を目指して頑張って走っていたんですよね。」
実希選手は至極冷静だった。そして懸命な追い上げで15位でフィニッシュ。奇跡が起こることはなかったが、ファンやギャラリーは彼女の勇猛果敢な姿をしっかりと目に焼き付けた。
見たことのない景色を走り
心機一転、フォーミュラに挑む

「冷静になれたのは、決して私だけの力ではなくて。たとえ私が中盤を走っていても、ファンの人たちが旗を振ったり、手を挙げたりして応援してくれている姿が至るところで見られて励まされたのも大きいです。がんばって気持ちを切り替えはしましたけど、一緒に走っているKYOJOドライバーのみなさんやファンの方々、 レースオフィシャルさんまで、たくさんの人に背中を押してもらえたような感じのレースだったなと思っています。」
シーズン全6戦を通してポイントを稼いできたのが貯金となり、2024年度もランキング2位を死守できた。だが、その結果では満足しないのが翁長実希だ。
「いろんなところで救われた部分も多かったのが、昨シーズンのレースでした。同時に、チャンスがあっただけに悔しいシーズンでもありました。最終戦はVITAでのKYOJO参戦最後のレースということもあって、みなさんに恩返しできる走りがしたかったというのも正直なところです。結果は伴わなかったですが、今まで見たことのない景色と場所を走れて、あらためて自分の中にいろんな気持ちが見つけられたような感じがありました。」
予選一発を大事にしてきたが、ポールポジションが獲れなかった一年でもあった。まだまだ成長できる部分があると、実希選手は自らを鼓舞する。
「自分はまだまだなのだと気づくことができた最終戦でした。自信を持つことも大切ですが、フォーミュラマシンになっての今シーズンは、慢心することなく挑みたいと思います。」
トップレベルチームのサポートのもと
最強のチームメイトと切磋琢磨

フォーミュラマシンでの初年度となる2025年KYOJO CUPは、国内のみならず海外からの注目度も高い。フォーミュラ参戦16年目を迎えるKids com Team KCMG(KCモーターグループ) が
KYOJO CUPに4台エントリー。香港に拠点を構え、国際的に活躍するこのチームに、実希選手は佐々木藍咲選手や海外選手らとともに所属する。
「KCMGさんはご縁のあるチームで、以前からレースのお手伝いをさせていただきながら勉強させてもらっていたんです。トップレベルのこのチームで走れるということに、すごく誇りを感じています。藍咲選手や海外の選手の方々も、それぞれが良きライバルになるのではないかと思っています。ライバルは同じチームにいた方が切磋琢磨できますから、それでチーム全体を盛り上げていけたら。」
2025年度はFIA-F4、GR86/BRZ CUPにも参戦予定だ。
「フォーミュラに乗る回数を重ねてしっかり学び、バトルをして前に出たいですね。VITAでチャンピオン経験のある翁長は捨て、自分の足りないところを開幕戦に向けてアジャストしていって、優勝をしっかり狙っていきたいと思います。」
どれだけ成長できるか、これからの自分も楽しみだと微笑む実希選手。フォーミュラでもその力強いバトルで、大いに観客を沸かせてくれることだろう。