フォーミュラマシンに乗り換えて
高次元のスピードバトルに挑む

「動いているのか動いていないのか、わからない(笑)」
新車両「ハイブリッドフォーミュラKCMG01」での第一回目の走行練習を終えた佐々木藍咲選手(以下、藍咲選手)は、開口一番そんな感想を漏らした。
「VITAは加重をかけると後ろのバネが伸びて前方が縮んで、加速するときは後ろが縮むということを体感でわかったんです。だけど、フォーミュラはまだそういった動力の伝達の仕組みがイマイチわからなくて(笑)。早く慣れたいです。」
KYOJO CUP3年目にして手に入れた、フォーミュラレース参戦のシート。未知なる挑戦にワクワクと胸を躍らせながら、藍咲選手は車両をKYOJO CUP事務局で一括管理する公平性に対して、「レース界でも環境的に恵まれているカテゴリー」だと俯瞰する。
「車両って、人によって好みや走りやすさがあるんですよね。VITAであれば、サスペンションが柔らかい車に好んで乗る選手もいれば、硬いバネが乗りやすいという選手もいて。そんな風に、VITAは個人的なドライビングスタイルに合わせた車づくりが可能だったんです。今年から乗らせていただくKYOJOフォーミュラは、たとえば車高を落としたいとかもできないので、イコールコンディションのもと、それぞれの技術力で戦えるのが楽しみなところでもあります。」
拠点とするのは、Kids com Team KCMG(KCモーターグループ)。スーパーフォーミュラをはじめ、国際的に活躍するチームで、KYOJOメンバーでは翁長実希選手も名を連ねる。
「実希さんにもいろいろ教えていただき、ドライバーとしても良い環境にいれるなぁというのは、すごくありがたいと感じています。良い機会を与えてくれたチームに対しては、走りで結果を出すことで恩返ししなきゃと思っています。」
VITAでのKYOJO CUPで経験した
悔しさも反省点もプラスに変えて

KYOJO CUP2024でのドライバーズランキングは8位。シリーズ全6戦をシングルフィニッシュすることができたが、残念ながらポイントを稼ぐまでには至らなかった。
「結構、悔しい一年でした。毎戦5〜7位にはつけていたんですが、どうしてもトップには届かずで。忘れられないレースは第2戦です。予選が繰り上がりながら4番手につくことができて、決勝では好位置からスタートを切れたにもかかわらず、失速してしまって。気づいたときには後方の選手に差し込まれてしまうという状況に陥って、焦りが出てしまったんですね。あとはどんどん順位を落としていったという、なんとも痛いレースでした。」
第2戦は、2024年のレースで一番良かった予選であると同時に、一番反省点が多い決勝だったと振り返る、藍咲選手。彼女にとってVITA2年目だった昨年は、一戦一戦、アグレッシブに“自分の走り”に挑戦した一年でもあった。
「チャレンジすることが功を奏した場面もありましたが、それが結果にはつながらなかったり、チャレンジしたことが裏目に出たこともありました。果敢にチャレンジしたものの、自分本来の走りを見失っちゃうっていうのがそれですね。どれもレースの経験不足が浮き彫りになったのかなと思いますが、それさえも経験になっていくとポジティブに受け止めています。」
様々なカテゴリーで経験を積み
フォーミュラの戦績につなげていく

「フォーミュラの走行練習を見ていても、カートに乗ってきた選手のタイムが速いんですよね。私はカート経験が少ない分、今から少しでも追いつけるように基礎からカートをやりたいなと思っています。」
飽くなき向上心は、中学、高校と打ち込んだ国体出場レベルのバレーボール部で培われたものなのだろう。今年3月、2025 MAX APG MAX LIGHTと混走となる KYOJOクラスというカートレースにエントリー。総合で5位、KYOJOクラスでは見事優勝を飾った。
あらためてカートの研鑽に努めながら、今年は走ることに貪欲に様々なカテゴリーにもトライする。
「チャンスがあれば経験を積みたいので、TOYOTA GAZOO Racingが主催するGR86/BRZ CUPに1戦、フェラーリ・チャレンジ・ジャパンという走行会にも1、2戦、スポット参戦予定です。あと、旧車のレースにも出ます! 去年、旧車のレースに参戦したとき、予選でポールポジションを獲ったんですが、決勝はマシントラブルでリタイヤしてしまって。今年は勝ちを決めたいですね。」
カーレース好きの“競争女子”を地で行く、藍咲選手。2025年は表彰台を目標に見据え、強い気持ちでKYOJOフォーミュラに挑む。