KYOJO CUP参戦5年目にして
勝利を欲しいままにした2024

2024年のKYOJO CUPは斎藤愛未選手(以下、愛未選手)の独壇場(どくだんじょう)だった。
全6戦中、表彰台に上がること5回。うち4戦で首位に輝き、加えてそのうち3戦は予選でポールポジションを獲った。昨年の愛未選手は、VITA-01というマシンを完全に掌握していた。
「怖いくらいに上手くいった一年でした。完璧を求める上では足りない点もありましたが、貫禄は見せられたかなと思います。」
そう振り返る、愛未選手。昨年もKYOJO CUPを舞台に数々のドラマが生まれたが、ヒロインとして幾度となくスポットライトを浴びたのは、紛れもなく愛未選手だった。
7月に実施された第2・3戦は、KYOJO CUP初となるスーパーフォーミュラ選手権との併催。参戦していた愛未選手の夫、坪井翔選手(VANTELIN TEAM TOM’S)と夫婦揃って王者に輝いた。自身の誕生日と重なった8月の第4戦は、トロフィーが記念のプレゼントになった。そして、シーズン最終戦はポール・トゥ・ウィンで有終の美を飾る。
「シリーズチャンピオンになれたのは、やはりチームのみなさんのおかげというのが大きかったです。主人も然り、周りに支えられて獲ることができたと思います。とくに最終戦は、三浦愛監督のために、またサポートに尽力してくれたチームみんなのために、頑張ろうという気持ちで走りました。自分のため!という感じで走ると、どうしても緊張感が生まれるので。レースは欲をかくとダメですね。」
その言葉は第5戦での自分への戒めであり、反省でもあった。
「第5戦はシーズンチャンピオンを決めたい、という思いが強すぎました。レース中盤でペースが鈍り、終盤11周目でスピンしてしまい、結果的にノーポイントで終わりました。でもあそこで地獄を見たことで、気合いを入れ直すことができました。第5戦でのあのミスがなかったら、チャンピオンは獲れてなかったかもしれません。」
チャンピオンはもはや過去の栄光
年が変わればまた一人の挑戦者に

2025年はVITAからフォーミュラマシンに乗り換え、KYOJO CUPに挑む。
「昨年はVITAもシーズン5年目で、経験値としてはアドバンテージがありました。カートの経験も積んできましたが、フォーミュラがカートと似ている部分があるとは言えど、やはりまったくの別物で。フォーミュラもまた、経験値がモノを言うカテゴリーだと実感しています。経験値と自分のセンサーが一致するかどうかが速く走らせるコツだと思うので、そこは頑張りどころです。」
とはいえ、KYOJO CUP2025においてはフォーミュラマシンに初めて挑む女性ドライバーが多く、スタートラインに大差はないという見かたもできる。
「別に2位、3位で良ければ経験値はみんな一緒だよね〜で済みますけど、1位になるためにはそれではダメですよね。KYOJOメンバーにはすでにフォーミュラに3年乗っている選手もいますから、そこに何ヶ月で追いつけるか。」
自分に対する厳しさは、第一線で活躍する者としての矜持。チャンピオンの座を守らねば、というプレッシャーもある。
「年が変わればチャンピオンも過去の栄光ですよね。フォーミュラへと車が変わりましたから、また挑戦者です。一から追う側の立場になりました。」
レースは満足することのない修行
上を目指して一生自分と戦い続ける

愛未選手はKYOJO CUP以外のレースにも参戦することで、フォーミュラの腕を磨きたいと考えている。
「チャンピオン獲得のご褒美ではないですが、ルーニースポーツさんから、F110 CUPに参加させていただけることになりました。F110は、GSTR財団によるスカラシップでジュニアドライバーや女性ドライバーに活躍の場を提供しているものなんですが、その地方戦に出させていただきます。旧型ですがF4マシンに乗れますし、男女混合戦になるのでバトルはもちろん、アグレッシブな若手ドライバーたちと速さの面でも凌ぎ(しのぎ)を削れるんじゃないかと。そちらも今から楽しみです。」
頂点を極めても現状に満足することなく、上を目指し続ける愛未選手。
「レースは一生修行というか、自分と戦い続けることだと思っています。フォーミュラでも面白いレースを繰り広げていくことで、自分のレベルも自ずと上がっていくと思うので、そうした中でチャンピオンを獲れたら。KYOJO CUPを盛り上げながら、モータースポーツが女性も活躍できる職業として、みんなの目指す場所にしていきたいですね。」