彼女の素顔

INTERVIEW

Vol.36

富下 李央菜

フォーミュラKC-MG01でもVITA-01でも。
狙うはKYOJO CUP表彰台のド真ん中ただ一つ

富下 李央菜

思うような戦績ではなかった2024
そろそろ結果を出したい2025



富下李央菜選手(以下、李央菜選手)のKYOJO CUP参戦は2023年から。当時高校2年生だった彼女は、開幕戦でポールポジションを獲得。華奢でチャーミングなルックスも相まって、その名は瞬く間にレース界隈に広まった。注目を集める中、2024年は第3戦と第5戦の2度、2位でチェッカーフラッグを受け、同年のドライバーズランキングは5位と、着実に戦績を上げている。

「初年度がデビュー戦でポールポジションを獲れたので、去年もチーム的には『もう一回いけるでしょう』みたいな雰囲気だったんですけど、なかなか思うようにはいきませんでしたね。」

モーターレースでは、予期せぬタナボタ展開も醍醐味。第5戦は繰り上がりで2位となったが、そもそも納得のいくレース内容ではなかったようだ。

「予選はコンディション的に自信があって、絶対ポールポジションを獲ろうと思ったんですけど、最終ラップで決めようと攻めたら裏目に出てしまって。タイムを更新できないまま、4番手と悔しい結果になりました。決勝は巻き返す気持ちで挑んだんですけど、前方は混戦、後ろからも迫ってくるみたいな感じで追い上げきれなくて。難しいレースでしたね。」

それでも、11月に開催されたスーパー耐久シリーズ最終戦と併催されたKYOJO CUPエキシビションレースで李央菜選手は大躍進を遂げる。1日目は白熱のバトルを繰り広げ、2位でフィニッシュ。2日目は初日以上にウエットパッチが多いコンディションの中、ファイナルラップで後続の選手と3.5秒の差をつけ、トップチェッカーを受けた。結果、2日連続で表彰台に上がったのだ。

「前日に雨が降っていた影響で、路面がハーフウエットだったんです。得意というわけではないんですけど、デビュー戦もウエットコンディションだったのでタイムを出せるかなと。内心は結構ビビっていて安全に走行しながらも、2日目は1位が獲れました。」

コンマ数秒の差を競い合いながら
ドライバーの道をステップアップ



レースデビューは小学5年生のとき。カートでのスピードバトルに目覚めた李央菜選手は、学校が終わると毎日のようにサーキット場へ通い、練習に明け暮れた。その甲斐あって2020年からは全日本カート選手権FP-3クラスに参戦。そして2022年、同選手権でシリーズ2位になったことを機に、満16歳以上が取得できる国内限定Aライセンスをゲットし、自身初となる四輪レース「KYOJO CUP」にエントリー。順風満帆なドライバー人生を歩んできた。

「フォーミュラにはまさか乗れるとは思ってもみなかったので、KYOJO CUPオーガナイザーの関谷正徳さんに『来年はこれだから』と言われたときはうれしかったです。新しいことを始めるときって、気分も一新されるので。」

はにかんだような笑顔の奥に、力強い自信をのぞかせる李央菜選手。2025年はフォーミュラとVITAクラスのダブルエントリーで、KYOJO CUPを盛り上げる。フォーミュラの走行練習では課題を見つけつつも、レーサーとして手応えも感じた。

「体力をもっとつけなきゃというところはありますが、感覚は掴めた感じです。1戦目から優勝したいと思っていましたが、走行練習の段階でKYOJOメンバーのみなさんが想定以上に速くて。自分自身が意外とタイムが遅かったので、開幕戦までに気合いを入れ直してきます。タイムはあと1秒は縮めたいです。1秒と言ってもコーナーごとにコンマ2秒縮めていけば、“塵(ちり)つも”でイケるかなと(笑)。」

様々なカテゴリーのレースに参戦し
すべての経験を明日の糧に



「フォーミュラはもちろん楽しみなんですが、VITAは3年目なので、そろそろチャンピオンを獲っておきたいと思っています。」

3月、李央菜選手は2025 FCR-VITA KYOJOクラスから今シーズンをスタートした。総合3位、KYOJOクラスで優勝を果たし、再び表彰台の真ん中に立った。KYOJOフォーミュラ開幕戦の前には、スーパー耐久シリーズ2025(以下、S耐)も控えている。

「S耐も何回か乗るんで、それで練習が積めたら。違う車両に乗ったほうが普段とは異なる感覚が得られて、その経験がまた別の車両にも活かせるんです。余計な考えが払拭できて、それでタイムが結構上がることもあるので、チャンスがあればいろいろエントリーしたいです。」

どのカテゴリー経験もすべては明日のレースの力。
「賞金がVITAレースよりも多いと聞いたので、フォーミュラも勝ちたいですね。1位しか見ていません。」

平然とそう言ってのける李央菜選手の、有言実行な活躍ぶりに期待したい。