チームづくりを突き詰めて
勝負を賭けたKYOJO CUP2024

「去年は絶対表彰台に乗ろう!と決めて、VITAに勝負を賭けた一年でした。」
そう語る岩岡万梨恵選手(以下、万梨恵選手)は、レース歴9年目。23歳のときにレースデビューし、2022年からKYOJO CUPにフル参戦。地道に戦績を上げてきた。
「先シーズンを振り返ると、シェイクダウンのときよりフィーリング良く予選に臨めたラウンドもあり、第4戦では予選で4番グリッドを手にすることもできました。でもいざ決勝になると、順位がダダダ〜と落ちてしまって結果につながらなかったり、ポジションを維持して走っていればタナボタで表彰台に乗れたかもしれないチャンスも取りこぼしたり。そういうのが辛いところではありましたね。」
小柄ながら、サーキットでは躊躇のないバトル展開でトップ争いに食い込んでいく。それでもKYOJO CUPの上位選手が築いた壁は厚く、昨年は付け入る隙が見つからなかった。
「タイムとしては結構、近づけた感触がありましたが、レースで勝つとなると一歩足りない。そこが自分のウイークポイントなのだと思います。バトルを挑んでも、結果としてペナルティを受けてしまうことも多かったですね。」
課題を見つけられさえすれば、対策を考えて手を打つことができる。万梨恵選手は、それまで以上にチームやメカニックと話し合った。
「学生時代の私は、どちらかというと我慢を積もらせて爆発してしまうタイプだったんです。ですがレースを始めてからは、周りにきちんと自分の意見を伝えなければ勝負もできないとわかって。去年はメカニックさんたちにとっても勝負を賭けた年だったので、本気で向き合いました。たとえばダンパーの選択一つでも、話し合う中で衝突することもあり、上手く意思疎通できなかったことがあればノートに書き出して。人との関わりを見つめ直しながら、レースまでを円滑に進めるためのコミュニケーションを学んだ一年だったと思います。」
タイムアタックでは自己ベスト更新
ポジティブにフォーミュラに挑む

レーサーはメカニックの協力なくして、レースには挑めない。
「人として感謝することは大前提なんですけど、チームの中で近しい存在のメカニックさんだからこそ、頼り切ってはダメなんですよね。それで、相手が応援したくなる選手ってどんな人なのだろう、と考えて。確かにイライラした人より、いつもにこやかに話し合える人の方が、自分だったら応援したいなと。自分自身が変わっていかなきゃと思いました。」
メンタル面で穏やかになれたことで、最終戦は落ち着いて臨めたという万梨恵選手。
「学生時代は器械体操の選手だったんですが、大会のたびに平均台から落ちるのではないかとか、着地をミスるのではないかとマイナス思考で取り組むことで成功につなげていたんです。その思考ぐせが染み付いていたんですが、最終戦は『なるようにしかならない!』とポジティブに切り替えて取り組んだら、思い切って走れました。」
結果はペナルティを受けて10位フィニッシュ。それでも心は晴れやかだったと、万梨恵選手は微笑んだ。戦績こそ伸びなかったが、チームの信頼関係が再構築できたことでうれしい成果もあった。
「予選のタイムアタックで1分58秒台を出すのが昨年の目標だったんですけど、FCR-VITAのレースでそれが出せました。練習でも自己ベスト8秒台でしっかり走ることができたので、自分の中で自信につながりましたね。」
自分自身をブラッシュアップし
新たなレース環境で表彰台を目指す

2025年、万梨恵選手はフォーミュラマシンにチャレンジする。
「本当はもっと早く乗りたかったんです。それでもいろいろ乗り越えなければいけないハードルがあり、今は『やっと乗れた!』という気持ちと、『本当に乗れた…』という感慨深い思いがあります。」
海外からの選手も加わり、KYOJO CUPフォーミュラはますます予測不能に。
「以前、何度か海外のレースに出場したことがありますが、外国人選手たちはまた違ったレース環境で揉まれていると思うので、そうした方々と一緒に走れるのはすごくうれしいです。あと、カート経験が豊富な選手たちもすごいと思うんですよね。彼女たちにどこまで食らいついていけるか、それも楽しみなところです。イコールコンディションを味方につけて、一発逆転したいですね。」
昨年からフォーミュラ参戦を見据え、筋トレに励みながら体力向上にも努めてきた万梨恵選手。
「レースは一人では戦えませんから、メカニックさんが勝たせてやりたいと思ってもらえるような人格を形成することが第一の課題です。それでチーム一体となって、表彰台を目指します。」