TGMGPで裏方を務めながら
レーサーとして表舞台に挑戦

「スーパーフォーミュラ(以下、SF)にも参戦しているTGM Grand Prix(以下、TGMGP)で広報をやっていまして。メディアにチームや選手の紹介をしたり、現場ではチームカメラマンとして映像と写真を撮影したりしています。」
大きなデジタルカメラを片手に現れた池島実紅選手(以下、実紅選手)は、自己紹介を兼ねてそう語った。TGMGPは、KDDIとTOYOTA GAZOO Racingとのスポンサード契約のもと、2025年よりKDDI TGMGP TGR-DCとしてSF参戦するレーシングチームだ。モータースポーツの最前線で人材育成も担う、注目度抜群のこのチームを運営する会社に実紅選手は所属している。
「15歳のとき、レーシングドライバーになりたいと決意してこの世界に入ったんですけど、なかなか資金面で乗ることができなくて。それでも自分なりにレースの世界を学べる方法はないかと模索していたとき、TGMGPのチーム代表と出会ったんです。レースに対する熱意が伝わったのか、もう10年以上、運営サイドで働かせていただいています。」
レーサーとして、FIA-F4選手権やフォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ・チャンピオンシップなど、スポット参戦ではあるがレース経験も積んできた。
「SFに帯同し、その領域のドライバーを間近に見ていると、次元が違いすぎて自分も乗りたいという感情を超えてしまいます。それでも自分自身が参戦するときは、いかにあの選手たちに近づけるかという感覚で挑んでいますね。」
普段の実紅選手はピットで過ごす選手の姿をファインダー越しに捉え、チームのリアルな空気感をSNSで発信している。
「チームで働きながらドライバーもする人って、多分いませんよね。私はマネージャー経験もあるんですが、エンジニアやメカニックといったチーム側の動きを把握できていることが、レーサーとしても強みになっていると思います。」
2024年はVITAでスポット参戦
KYOJO CUPでも存在感を発揮

2024年は、KYOJO CUPにスポット参戦した実紅選手。
「VITAのメンテナンスをしたい、車両について知識を深めたいという方々が、レーサーとしての私を応援してくださっていて。そこでTGMGPのメカニックがサポートするかたちでチームができ、KYOJO CUPに参戦することになったんです。」
とりあえず出てVITAを走らせてみてほしい、とのリクエストに応じるかたちで実紅選手は第2戦、第4戦にチャレンジ。第4戦では予選で7番グリットを手にし、決勝前半でトップ集団を追いかける力走を見せた。
「TGMGPはプロフェッショナルなチームなので、参戦するからには結果を出したいという気持ちで挑みました。シングルフィニッシュには及びませんでしたが、普段、あまり変化させられないレギュレーションのカテゴリーばかりに乗ってきたので、フォーミュラより改造度が自由なVITAはとても勉強になりました。レーサーとしてかなり引き出しは増えたと思います。」
そして2025年、ハイブリッドフォーミュラを導入し、進化したKYOJO CUPにチャレンジする。
「フォーミュラと聞いたときは少し緊張感があったんですが、普段からSFのドライバーを見ながら、いつかはあの領域に行きたいという気持ちは強かったので、こうしてトライできることを光栄に思っています。1つのカテゴリーでシリーズ参戦するのも初めてなので、その点も楽しみなところです。」
最強のレース環境のもとで
キャリアを積みながらチームに貢献

KYOJO CUPの参戦を発表した際、SNSでは「TGMGPの広報の子じゃない?」「カメラは置くんですか?」といった反応が返ってきたそうだ。
「私を広報として認識してくださっている方と、ドライバーとしての私を知ってくださる方がいらっしゃって。今後はどちらの顔の私も知ってくださる方も加わるので、面白いなと感じています。広報としてチームに貢献しながらレーサーとしても結果を残すことで、新しい自分のかたちで創っていければと思っています。」
TGMGPは、若手レーサーや女性レーサーが活躍できる環境を提供するチームでもある。チームが積み重ねてきた豊富なレースデータやシミュレーターなどを備えた手厚いサポートのもとで、実紅選手はレースに備える。
「新生KYOJO CUPは、今まで以上に注目度の高いカテゴリーになります。チームのマイナスプロモーションにならないよう、ドライビングを突き詰めたいですね。シリーズを通してレベルアップできるよう、毎戦、自分自身に挑みたいと思います。」