彼女の素顔

INTERVIEW

Vol.41

細川 由衣花

3児のママさんレーサーが育休からカムバック!
復活のステージはフォーミュラでの新生KYOJO CUP

細川 由衣花

女性レーサーの道を切り開いた
KYOJO CUPの元祖ママレーサー


細川由衣花選手(以下、由衣花選手)は2018年からKYOJO CUPに参戦。今ではさまざまなキャリアを持つ女性レーサーがモータースポーツ界で活躍しているが、わずか7年前でも子育てとレースを両立している選手は稀な存在だった。

「もともと車好きで、中学生の頃はレースを観戦しに一人で富士スピードウェイに来ていたほどでした。自分の車を持ってからはたまにドリフトくらいはやっていましたが、レース経験はゼロ。ところが、ご縁あって結婚したのがプロレーサー(細川慎弥選手)で。主人からあるとき突然、『KYOJO CUPっていう女性だけのレースがあるから、出てみたら?』と言われて。乗れるかな?という不安より、あの富士を走れる!という思いが勝って、迷わずエントリーしたんです。」

その頃の由衣花選手は保育園に通う年子の子どもを抱え、子育て真っ只中。慌ただしい毎日ではあったが、ご主人という最強の師匠兼サポーターを味方にレースの世界へと飛び込んだ。

「サーキットを初めて走行する車両がVITAで。予選のタイムアタックも最初は10秒落ち。周りはカート経験者ばかりの中でのレースで、それでも3位になって表彰台に登ったこともありましたね。」

そんな由衣花選手にターニングポイントが訪れる。
「長男がカートに興味を持ち始めて、レースにも参戦するようになったんです。VITAはスポンサーが付くけれど実費負担もありますし、キッズカートもある程度の費用が必要で。極力、主人を含めて自分たちでメカニックも行って参戦していたんですが、VITAのオーナーさんが車両を手放すタイミングで一旦KYOJOを離れ、息子のサポートに専念したんです。」

選手として家族に応援されてきた立場から、今度は由衣花選手が家族を応援する側へ。
「KYOJO参戦を決めたとき、結婚や出産後でもレースができるということを広めたい思いもありました。その点は証明できたかな。」

水泳でオリンピックを目指した10代
あの頃のアスリート魂が、今再燃


現在、由衣花選手は30代。小学3年生の長男と小学2年生の長女、5歳の次女の3人の子を持つママとなった。そんな由衣花選手のもとに、フォーミュラでのKYOJO CUPへの復帰の話が舞い込んだのは、昨年12月のことだ。

「私は御殿場在住なんですが、静岡でチームを発足するという話でそこからレーサーとして参戦させていただけることになって。寝耳に水でしたが、チャンスをいただいたので挑戦することにしました。」

学生時代は水泳競技でオリンピックを目指す強化チームに入っていた、由衣花選手。腰を傷めたことでドクターストップがかかり、離脱を余儀なくされた過去があった。
「一年くらい休んでも復活できると思っていたんですが、甘かったですね。復帰後、ベストタイムを取り戻せなくて。気持ち的に泳げても体力が追いつかないんですよね。結果的に挫折しました。」

フォーミュラへの挑戦は、不完全燃焼のままで終わった水泳時代のアスリート魂に火を点けた。
「家事の合間にちょっとでも筋トレをやっておこうと、やり出したら眠っていたストイックさが顔を出してきて(笑)。他の選手に追いつけるかわかりませんが、気持ち的には復活したいと思います。」

朝から両手首にリストウエイトを着けて洗濯物や洗い物をし、子どもたちを送り出した後は縄跳びを毎日1000回以上。週末は子どものカート先であるAPGのサーキット外周をランニングもしているという。レーサーとしてフィジカルとメンタルを調整しながら、家事も育児も怠ることはない。

「家は、私にとっても家族にとってもリセットできる場所。レースでの気持ちの切り替えも、子どもがいるからできないではなく、子どもがいることでできると思っているんです。」

挑戦すること、あきめないことを
自身の姿で子どもたちに伝えていく


「息子がカートをやるようになって気づいたのが、自分のレースよりうんと緊張するということ。息子がピットから出ていってスタートするとき、バクバクが半端ないんです。」

そう言って、由衣花選手は朗らかに笑った。普段は、ご主人の細川慎弥選手が指導しているジュニアカートチームの運営にも参加している。所属する児童からは、親しみを込めて「ゆいぴー」と呼ばれているそうだ。

「水泳選手時代は一人きりで戦っていましたが、今は家族やチームがバックにいるのですごく心強いです。子どもたちやチームのみんなが今後、何かに挑戦するときにあきらめない気持ちを持ってもらいたい―そのためにもフォーミュラでがんばっている姿を見せたいと思います。」