2024年は着実に戦績を上げ
KYOJOレーサーとして大きく成長
2024年下半期、ハナ・バートン選手(以下、ハナ選手)は好調の波に乗っていた。
ターニングポイントになったのは、VITAでのKYOJO CUP 第4戦。レース後半から力強い走りで次々とオーバーテイクし、4位争いに浮上。最終ラップのTGRコーナーでは、2台並んでのサイドバイサイドを繰り広げ、自己最高位となる4位でチェッカーフラッグを受けた。
「去年は第4戦からチームが変わり、乗ったことない車両での挑戦でした。不安もありましたが、予選の11位から決勝で4位まで順位を上げることができました!」
表彰台にはあと一歩のところで届かなかったものの、2分00秒529のタイムを記録し、ファステストラップ賞に輝いた。
「トップに近いポジションでレースをするのは初めてで、すごく楽しかったです。あの結果が自信につながって、それからパフォーマンスが向上していきました。それでも昨シーズンを振り返ると、予選はいつも11位前後だったから、決勝で良いリザルトは残せなかったです。」
喜んだりがっかりしたり、くるくると表情を変えながら語るハナ選手。最終戦でも、第二集団で抜きつ抜かれつのバトルを披露。10周目のコーナーでスピンし、ポジションを落としたが、なんとか5位でフィニッシュを決めた。そして、ドライバーズランキング9位でシーズンを終える。
日本でレースデビューしたのは2022年。KYOJO CUP参戦2年目にしてこの成果は、著しい成長だ。だが、ハナ選手は決して現状に満足しない。
「もっと学んで、もっとスキルアップしないと!」
“サーキットオレンジ”の活動で
レーサーを目指すキッズを支援
2024年は技術の向上に努めただけでなく、様々なことに挑戦した1年だった。「サーキットオレンジ」というコミックを制作し、SNSから発信し始めたのもその一つだ。目的は、若いドライバーがレースを始めるためのサポート。50万人以上のフォロワーを持つハナ選手ならではのインフルエンサーという側面を活かし、SNS運用やコンテンツ発信をサポートし、収益での支援を試みている。
「サーキットへ来ると、KYOJOドライバーたちは素敵なバナー(応援用のぼり)があるよね。でもハナの名前はなくて。日本にはファンがいないんだなって思っていたら、あるとき『SO COOL!! HANA!!』って描かれたバナーを掲げて応援してくれる人たちが現れたの! 彼らは“とっくん”(友人レーサー)がやっているキッズカートスクールの生徒ファミリーで、自分たちのカート練習費用だけでも大変なのに、富士スピードウェイまでハナのレースを見に来てくれるのがうれしくて。ハナも何か応援でお返しできないかと考えて、コミックプロジェクトをスタートしました。」
「モータースポーツはお金がかかる競技。才能があっても、経済的な壁でレーサーになる夢を諦める子どももたくさんいる。だから”サーキットオレンジ”というプロジェクトを通じてレースの楽しさを伝えながら、その収益を次世代ドライバーのサポートに使用できる、そんなシステムを作りたいと思っています。」
新たにフォーミュラの切符を手に
チャレンジングな一年をコミット
ハナ選手自身、アメリカでレース参戦したくても資金調達が難しく、実現できなかった過去がある。家族揃って応援しに来てくれた生徒に、ハナ選手はカートのフレームとエントリー台のバナーをプレゼント。そして昨年12月、その生徒の初めてレース出場が叶った。
「自分のお金で始めたから大きなスケールではできなかったけど、これからもレーサーを目指す子どもたちをサポートしていきたいと思っています。」
サーキットオレンジのフォロワー数は現在、2.5万人(2025年4月現在)。ハナ選手が蒔いた優しい種は、着々と芽を出し始めている。昨年はさらにサイドビジネスでブレーキパッド会社も立ち上げた。
本業のレーサーでは最終の合同テストでウエットコンディションのなか、2位を獲得。着実に力をつけている。
「今はフォーミュラの参戦に向け、シミュレーターやトレーニングでできる限りの準備をしています。もっと上達したいから、今年はカートレースもVITAにもチャレンジするよ。」
ハナ選手の勢いは止まることを知らない。
「モータースポーツは才能だけではどうにもならない部分があります。家庭環境や経済的事情に左右される世界です。私はそれを変える人になりたい。次の世代のドライバーが夢を追いかけることができるよう、道を切り開くことが私の目標です。」