彼女の素顔

INTERVIEW

Vol.45

Flame Airikkala

祖父は世界ラリー選手権のチャンピオンレーサー
フィンランドから参戦した青い瞳のフォーミュラ戦士

Flame Airikkala

欧州で数々の戦績を残し
次なるステージに日本をロックオン


小顔ですらりとしたスタイルにブロンドヘアと、モデルさながらの雰囲気を醸し出すフレイム・アイリッカラ選手(以下、フレイム選手)。フィンランドとイギリスの両国籍を持ち、本国イギリスではショーモデル経験もある、弱冠17歳のレーサーだ。レースデビューは14歳のとき。2023年に参戦したフィエスタ・ジュニア・チャンピオンシップでは、レーサー歴わずか2年にして見事な戦績を残す。


「シルバーストーンで開催されたフィエスタ・ジュニア選手権はとてもエキサイティングでした。レース1では途中で接触してしまい順位を落としたんですが、なんとか巻き返して総合7位になりました。レース2では28人のドライバーがいる中で3位で予選通過し、序盤からトップ争いに食い込んだんです。それが終盤にギャップを空けてしまい、最終的には6位フィニッシュ。それでも、レースの途中でファステストラップを記録できました。」


シルバーストーンと言えば、1950年にF1世界選手権の開幕戦・イギリスGPが行われた由緒あるサーキットだ。その歴史ある舞台で、フレイム選手は新人ながら堂々の総合6位という自己最高(当時)のリザルトを収めた。


「2023年の4月に参戦したレースでは、予選結果がグリッド最後尾だったんです。それから5戦でトップ争いができるほど進歩したことは、自分の中でも誇りに思います。」


2024年は様々なカテゴリーにエントリー。フォーミュラ・ウーマン2024、スウェーデンで開催されたフォーミュラ・ノルディック・チャンピオンシップなど、果敢に取り組んでいった。そんな中、シルバーストーンGPでのフォーミュラのカーレース「GB4」のテスト走行日に思いがけないチャンスが舞い込んでくる。


レースを始めたきっかけは
ラリー選手権で活躍した祖父のDNA


「日本で女性レーサーだけのフォーミュラレースが始まるんだけど、一緒にチャレンジしてみませんか?」

アジアのレーシングチーム「Kids Com Team KCMG(以下、KCMG)」のドイツブランチを担当する監督が、フラメ選手にそう声をかけたのだ。


「素晴らしい機会をいただいたと思いました! フルシーズン参戦できることも大変うれしく、このチャレンジを与えてくれたスポンサーとチームに深く感謝しています。」


こうしてKYOJO CUP フォーミュラのシートを手に入れたフレイム選手。運の良さもあるが、彼女のレーサーへの道は生まれる前から用意されていた。

「祖父がWRCに参戦していたペンティ・アイリッカラ(以下、ペンティ氏)なんです。」


WRCとは、FIA(国際自動車連盟)が主催する世界ラリー選手権だ。ペンティ氏は1973年からこのWRCに参戦。1989年には、三菱ギャランVR-4で挑んだロンバートRACラリーで見事チャンピオンに輝いた。ブリティッシュラリー選手権にもたびたび出場し、こちらも1位表彰台を経験した。引退後はイギリス南東部のオックスフォードシャー州でラリードライビングスクールを運営するなど、ペンティ氏はラリーでの活躍だけでなく、モータースポーツ界に多大な貢献を果たした人物だといえる。


「実は母もイギリスでツーリングカーのサポートレースに参戦していました。」

祖父、母、娘と3世代で歩んできたレーサーの道。才能の約50%は遺伝子で決まると言うが、持って生まれたDNAがフレイム選手のポテンシャルをどこまでも引き上げる。


最強チームKCMGから参戦し
そのポテンシャルを存分に発揮


プライベートでは、イギリスの大学進学課程「Aレベル」に取り組む学生でもあるフレイム選手。つい最近、運転免許を取得して公道デビューし、今は私生活でも運転が楽しくて仕方ない様子だ。2025年はすでに様々なカテゴリーに参戦し、レーサーとしてのスキルアップにも余念がない。


「2月のラリー4フィエスタでは残念ながらマシントラブルでリタイアしましたが、良い経験になりました。3月はドニントンパーク・サーキットでフォーミュラ・ウーマンに参戦し、チームクラスカテゴリーを1位でフィニッシュしました。」


KYOJO CUPでは、スーパーフォーミュラで国際的に活躍する「Kids com Team KCMG」が彼女をサポートする。


「誰でも初めて訪れる土地ではナーバスになると思いますが、私は意外とリラックスしています。富士スピードウェイのようなロングストレートコースはあまり経験がないので、もっと走り込んでもっと慣れていきたいですね。」


恵まれたルーツを強みに、日本ではどんな走りを見せてくれるのか。今シーズンの活躍に注目したい選手の一人だ。