紅一点で参戦したWRCでクラス優勝
KYOJO CUPと並行してラリーに挑む
「レースとラリーの違いですか? どちらも車で競い合うモータースポーツながら、レースは目の前に敵が見え、ラリーは敵が見えない─それが大きな違いですかね。あと、路面もまったく異なります。サーキットは砂や落ち葉もないフラットな状況に整えられていますが、ラリーでは苔もあり、ぬかるみもあり。走行中はサーキットでもいろんな神経を使っていますが、ラリーは突然路面に裏切られたりする場面があり、そのたびに自分自身の運転技術の引き出しから臨機応変に対処する必要性があります。どちらも違った魅力があり、どちらも楽しいです。」
唐突な質問だったが、平川真子選手(以下、真子選手)はとても丁寧に答えてくれた。
昨年はKYOJO CUPにフル参戦する傍ら、ラリー競技にも意欲的にチャレンジした1年だった。9月、WRC世界ラリー選手権が主催する「ビヨンド・ラリー女性ドライバー育成プログラム」に参加。世界中から15名が選抜され、日本からはただ一人、真子選手が選出され開催地のポーランドへ。そして、ラリーの名門チーム「Mスポーツ」の本社でトレーニングキャンプに取り組んだ。
「セントラル・ヨーロピアン・ラリー(CER)の出走権の審査をかねたキャンプで。残念ながらそのシートは手にできませんでしたが、楽しかったというのが一番の感想です。コミュニケーションがあまりできなかったことが心残りだったので、英語の勉強が新たな課題になりました。」
3日間のプログラムだったが14名の精鋭と切磋琢磨する時間は、得るものが多い経験となった。その後、10月のKYOJO CUP 第5戦では3位で表彰台に上がり、11月は愛知・岐阜で開催されたWRCラリー選手権「フォーラムエイト・ラリージャパン2024」に参戦。全日本ラリー選手権で活躍する国内勢が20台以上もエントリーする中、唯一の女性ドライバーとしてチャレンジした。
最強のレーサー一家を味方に
モータースポーツは“平常心”で!
「JR3クラスからトヨタ・ヤリスで参戦しました。ナショナル部門では5位(総合27位)でしたが、クラス優勝できたのは良かったです。」
ラリー競技でも、しっかりと戦績を残した真子選手。父も兄もレーシングドライバーというレーサー一家で生まれ育った。兄はル・マン24時間レースの日本最年少出場記録を保持する世界的ドライバー、平川亮選手。F1においても、今年4月TOYOTA GAZOO Racingが提携するハースへ移籍し、リザーブドライバーとしてFP1に出場した話題は記憶にも新しい。
「レースを始めたのは家族の影響ですが、カートに乗ったのは普通自動車免許の取得後なんです。レースに出るうちにどんどん運転するのが楽しくなっていった感じです。」
インタビュー中も終始落ち着いた印象の真子選手だが、レース中も熱くなることはないのだろうか。
「あまり感情的にならないですね。それは兄も同じだと思います。平川家では“平常心”という言葉を大切に、モータースポーツに取り組んできたので。レースには予期せぬ局面が多々ありますから、一喜一憂せず冷静に、というところですね。」
そんなクールな真子選手が、年明け早々、ホットなニュースでモータースポーツ界隈を賑わせた。SNSで結婚を発表したのだ。お相手は2020年にTCRジャパンシリーズでチャンピオンを獲得し、現在、SUPER GT GT300クラスで活躍中の篠原拓朗選手。最強のパートナーがレーサー一家に加わり、真子選手の精神的支柱はより強固なものになった。
フォーミュラでのKYOJO CUP参戦
まずは楽しみ、結果を出していく
KYOJO CUP 2024ではドライバーズランキング4位を獲得。第3戦、第5戦では3位でチェッカーフラッグを受け、VITAでも確実な戦績を残した。2025年、真子選手もまたフォーミュラで新生KYOJO CUPに挑む。
「イコールコンディションと言いますが、台数が20台ありますから、同じと言えど個体差はそれなりにあると思っています。だからこそ、自分ができることは何か、どうやって走りたいか、どうなりたいかを考えて、結果に反映できたらと思います。」
KYOJO CUPはROOKIE Racingから、ラリーはTGRから参戦する真子選手。ともにKYOJO CUPをスポンサードするTOYOTA GAZOO Racingの提携チームだ。
「去年に引き続きお世話になることになり、本当に身が引き締まる思いです。目標は世界で活躍できるドライバーになること。自分の可能性を信じて、どのレースにも全力で臨みたいですね。今、がむしゃらに頑張っている感じが自分の中でとても楽しいんです(笑)」