RACE REPORT

世界は、いまKYOJOに目を向けています。

――KYOJO TRYOUTが示した、競争女子の現在地

 

20251222日と23日の2日間にわたり、富士スピードウェイでKYOJO TRYOUTが開催されました。初日はシート合わせとレーシングシミュレータによるトレーニングが行われ、2日目には富士スピードウェイのショートコースにおいて、フォーミュラマシンによる実車走行が実施されました。

 KYOJO CUPへの参戦を目指すドライバーにとって、このTRYOUTは単なるテストではありません。新しいマシンへの適応力、未知の環境への対応力、そして自らの未来を切り拓く意志が問われる重要な機会です。

 今回のTRYOUTには11名のドライバーが参加し、そのうち7名が海外からの参加でした。フィンランド、オーストラリア、マレーシア、台湾など、国境を越えて女性ドライバーたちが富士スピードウェイに集まりました。この光景は、KYOJO CUPがいま、日本国内のシリーズという枠を超え、世界のドライバーたちにとって現実的な選択肢となりつつあることを明確に示しています。

 

    ZENKAIRACING御殿場


F1 Academyドライバーが語った、日本という「新しい世界」

 その象徴的な存在のひとりが、オーストラリア出身のJoanne Ciconteです。17歳の彼女は、すでにF1 Academyに参戦した経験を持つフォーミュラドライバーです。9歳でカートを始め、オーストラリア国内で経験を積んだ後、ヨーロッパへ渡り、Ferrari Driver Academyのテストにも参加しました。F1と併催されるレースの舞台を経験してきた彼女にとって、日本での挑戦は新しい意味を持つものでした。

 「日本は私にとって新しい世界です。これまでヨーロッパで経験を積んできましたが、ここでの挑戦は自分をさらに成長させてくれると感じています」

 富士スピードウェイのショートコースを走行した後、Joanneはそう語りました。新しいマシン、新しいコース、新しい環境。そのすべてを前向きに受け入れ、自らの可能性を広げようとする姿勢は、すでに世界の舞台を経験してきたドライバーとしての強さを感じさせるものでした。

 同じくオーストラリアから参加したGeorgia Morganもまた、日本での挑戦に明確な目的を持っていました。14歳でカートを始め、現在はオーストラリアF4に参戦している彼女は、KYOJO CUPの存在についてこう語ります。

 「女性ドライバーだけでレースができる環境はとても特別です。日本のモータースポーツはレベルが高く、その一部になりたいと思いました」

 彼女にとってKYOJO CUPは、単なる新しいカテゴリーではありません。ドライバーとして次のステージへ進むための機会であり、自らの可能性を広げるための舞台です。実際に走行を終えた後には、「ここで車を運転することは本当に楽しく、素晴らしい経験でした」と語り、この場に立つことの意味を実感している様子が印象的でした。

 


ドライバーとして成長するため、日本を選ぶ

 やはりオーストラリア出身で21歳のPaige Raddatzは、KYOJOの魅力を「20台ものグリッドがすべて女の子で埋まる光景」と表現しました。「オーストラリアでは今まで見たことがなかった」と語った彼女は、自らの成長のためにぜひKYOJO CUPでレースができる機会を得たい、と強い意志をにじませていました。

 マレーシア出身のLoke Yin Yi、通称YYは、Swift One-Make Series2年連続チャンピオンを獲得し、セパン1000km耐久レースでも優勝経験を持つ実力者です。彼女が日本での挑戦を選んだ理由は明確でした。

 「日本には多くのサーキットがあり、さまざまな環境で経験を積むことができます。ドライバーとして成長するために理想的な場所だと感じています」

 ドライバーとして成長するための環境を求め、日本を選ぶ。この選択は、日本のモータースポーツが持つ価値を象徴しています。

 一方で、このTRYOUTは、すでに完成されたドライバーだけの場ではありません。ここには、夢の入口に立つドライバーの姿もありました。

 香港生まれ、台湾育ちのCarmina Wongは、今回初めてフォーミュラマシンに挑戦しました。レースクイーンとしてモータースポーツの世界に関わったことをきっかけに、ドライバーとしての道を歩み始めた彼女にとって、フォーミュラカーに乗ることは長年の夢でした。

 「フォーミュラカーに乗るのは今回が初めてですが、この機会を得られたことをとても嬉しく思っています」

 GT4マシンでの経験を持つ彼女にとって、フォーミュラはまったく異なる世界です。しかし、その未知の世界に踏み出すこと自体が、新しい未来への一歩となっています。

 また、日本の若い才能の存在も、このTRYOUTを象徴する重要な要素でした。15歳の石崎百花は、KYOJOカートシリーズのチャンピオンとして、このTRYOUTへの参加権を獲得しました。小学2年生からカートを始め、着実に経験を積み重ねてきた彼女にとって、フォーミュラマシンは新しい挑戦でした。

 「とても速くて、最初は少し戸惑いましたが、本当に楽しかったです」

 その言葉には、未知の世界に対する率直な驚きと、それを受け入れる柔軟さがありました。将来については、「まずはKYOJO Formulaでレースに出場することが目標です」と語り、その視線はすでに次のステージへと向けられています。

 


富士から、世界へ

 そして今回のTRYOUTには、13歳で世界に踏み出した日本人ドライバー、松井沙麗の姿もありました。5歳でカートを始め、国内外で実績を積み重ねてきた彼女は、JAFジュニアカート選手権で女性として初めて優勝を果たしました。その後、欧州での活動を本格化させ、2024年にはF1チームであるウィリアムズの育成プログラム「Williams Racing Driver Academy」に選出されています。

 現在15歳で世界のトップカテゴリーで鍛錬を積むドライバーが、このKYOJO TRYOUTの場に立っているという事実は、このシリーズが持つ意味の大きさを物語っています。KYOJO CUPは、女性ドライバーのためのシリーズであると同時に、世界へとつながる可能性を持つ舞台となりつつあります。

 富士スピードウェイでの2日間を通じて明らかになったのは、KYOJO CUPがいま、新しい段階に入っているということでした。異なる国、異なる文化、異なる経験を持つドライバーたちが、この場所に集まり、自らの可能性を試しています。

 彼女たちがここに来た理由は、それぞれ異なります。しかし共通しているのは、このシリーズに未来を見出しているということです。

 KYOJO CUPは、女性ドライバーのためのシリーズとして誕生し、歩みを続けてきました。そしていま、その舞台は国境を越え、世界中のドライバーにとって新しい可能性の象徴となりつつあります。

 


富士スピードウェイで走った一台一台のマシンの中には、それぞれの夢がありました。その夢は、この場所からさらに大きな舞台へとつながっていきます。

KYOJO TRYOUTは、その未来の始まりを示していました。

22の限られたシートを巡り、国境を越え、世代を超えた競争は確実に激しさを増しています。

世界は、いまKYOJOに目を向けています。
ここから、新しい物語が始まります。